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ポルシェ901から911へ

何かを始めると必ずと言っても良いほど、大小様々な問題が発生します。それは予測されていたものもあれば、予想外の問題もあると思います。車の生産についてもそれは例外ではなく様々な問題が発生します。
今でこそ世界中に多くのファンを獲得しているポルシェ911も同様に様々なトラブルに直面し、数々のトラブルを克服し現在に至っています。

数字のトラブル

1948年の356誕生以来様々な試行錯誤を重ねて誕生した911です。量産化されればまた新たに何か問題が起きるだろう事は、ポルシェも当然予想していたでしょうし、覚悟もしていたでしょう。
ポルシェ911は、当時はポルシェ901として開発されていました、そして当然901として発表されることになります。しかし、数字をめぐるトラブルが起きることまで予想出来ていた人はポルシェにはいなかったでしょう。
1963年のフランクフルトモータショーでポルシェ356の後継車種としてポルシェ901が発表されました。しかし、その発表を受けフランスの自動車メーカーのプジョーから抗議の連絡が届きます。その内容は「中央の数字に0を置いた3桁の数字はプジョーが自動車の名称に使うため、全て戦前に商標登録を済ませている。もしも、ポルシェが901を新型車の名称として使用したら商標権の侵害になる。」という内容でした。この時点では901は、まだポルシェの設計事務所内のプロジェクト番号の一つだったのでポルシェは即座に901の名称から911に変更することができ、その対処が即座に行われたためユーザーに届く車は初号機から911として届けることができ幸いにも混乱を免れることができました。しかし、部品やユニット類(エンジンやギヤボックスなど)のナンバリングは変更をしていなかったため、901という数字はポルシェ内の流通番号として残ることとなりました。
この、ポルシェ911が何故911となったのか、この話は非常に有名なのでご存知の方は911ファンに限らず多いことでしょう。

ハンドリング性能向上に向けて

数字のトラブルは無事に回避したポルシェでしたが次に発生したのが901が量産されるにあたって起きた不具合のうち、最も深刻な不具合だったのはハンドリング関連の不具合だったと言われています。
一般的にエンジンが後車輪の後ろにあるタイプの車は、後輪にかかる荷重が大きくなりオーバーステアの傾向が強くなり、そして直進の安定性にも影響が出てくると言われています。また、横風の圧力中心が車の重心よりもかなり前の方にかかるため横風の影響も大きく受けると言われています。しかし、この種の傾向はサスペンションを適切に設計し空力補助装置を付加することで完全とは言えないまでも、それに近いほど修正することが可能です。
実際の例では、タイプ935はリヤへの重量配分が69%もあり、そのうえ量産仕様に近い911のサスペンションを使っていたにも関わらず当時の世界選手権で大活躍をします。もちろんドライバーが優秀だったこともあると思いますが935が活躍した背景には、初期の911の4倍もあるワイドリムを始めとした強力な空力補助装置とレーシングタイヤの存在が大きかったと言われています。

一方、初期の911では、タイヤのサイズが前後同一なうえにリム幅が4.5インチと狭かったために、急激なファイナルオーバーステアを避けつつも適度な直進安定性を持たせるには、前後のサスペンションのセッティングをを普通程度のサイドフォースでも強力なアンダーステアが出るように調整するしかありませんでした。
量産開始時点で911のエンジン重量が当初の目標を大幅に上回って後輪荷重が増えてしまったものの、この方法で普通のコーナリングで強いアンダーステアになるところまではうまく対処出来ました。しかし、細くてスリップアングルが大きいタイヤのために旋回時に駆動力の変化に応じてノーズの向きが顕著に変わる傾向は、残ってしまいました。特に高速コーナーを走っているところで急にスロットルをオフにしてしまうと、荷重の移動が発生し後方が持ち上がり後輪にプラスのキャンバーがついてしまい突然オーバーステアが発生してしまいました。

苦労は尽きない

これとは別にポルシェでは少々困った問題が他にもありました。
優秀な職人がつきっきりで注意深く組み立てを行った量産前の試作車では起きなかった現象が、量産体制になった途端に現れるようになってしまったのです。生産される車の中に左右のカーブで明らかに挙動が異なる車が数台混ざってしまうという問題が起き、その問題の原因と解決にもあたらなくてはなりませんでした。
その原因は、工場の組立ラインの中にあり、原因を明確にすることで後々改善されていくこととなりますが、当時の技術者達は相当に頭を悩ませたことでしょう。

経験は未来に活きる

直進安定性の問題と横風に流される問題についても悩まされることになり、試行錯誤を繰り返しました。しかし、実際には意外な方法で対処できてしまう事になります。
様々な解決案の中に、前輪荷重を上げてみてはどうかという意見がありました。試しにフロントバンパーのオーバーライダーに鉛を詰めて前輪の荷重を上げてテストを行ってみました。しかし、それだけでは特に大きな変化は現れませんでした。次にその重りをバンパーの両端に移動させて試してみたところ、その効果が顕著に現れました。
そのテスト結果を受けてポルシェはすぐに、コストの高い鉛ではなく11kgの鋳鉄の塊を「バンパー補強部ブロック」として生産しバンパー両端の裏側に取り付ける処置をとりました。一見すると、かなり場当たり的な対処方法にも見えてしまいそうですが、ユーザーからのクレームに対してすぐに対応できるという利点があり、実際にこの補強ブロックの需要もかなり多くありました。
この重りの効果は非常に大きく、見た目では取り付けてあるか、取り付けていないか、の判断がつかない車でも乗って少し走ってみれば、すぐに分かるほどだったそうです。

このエピソードはポルシェの技術者たちにとっては、楽しい思い出ではないでしょう。しかし、このバンパーの重りに救われた911は幅の狭いホイールとタイヤのまま、かなり満足度の高い安定性と、持ち前の抜群のコーナーリングスピードを安心して楽しめる車に成長することになり、この経験によって足回りの研究と開発がすすみ現在に至っている事になります。
もしもの話になってしまいますが、この重りが誕生していなければ911の存在自体が消滅し過去の車として扱われていたかもしれません。

更新日: 2016年7月27日 投稿者: UNTAMED スタッフ

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