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目に見えない重さとの戦い

1950年代に登場した356をポルシェは「時間を超越した美しさ」として宣伝を行いました。そして、それは正しい主張だったと思います。というのも、356から901そして50年以上の時間を経た現代のカレラを見比べた時にデザインの本質は変わらずに継承されているのを感じ、これからも変わらないのではないだろうかと思いうからです。
これは、他のメーカの車では滅多に起こることではないでしょう。では、どうしてポルシェではそれが起きるのかを考えてみると、ポルシェのデザインはただのファッションや流行に基づいたデザインではなく「最小の居住空間の周りに最大の性能を発揮する軽量でコンパクトな車にする」という考えに基づいた機能追求のデザインが基本になっているからだと思います。

重量との戦い

フェリー・ポルシェの息子であるフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェがデザインした911の901型の外観は1964年の登場以来10年間に大きな変化をせず、1974年に登場した930型で初めて大きな変化がありました。これは、アメリカの新法規に基づくための変更だった為、もしも法規の変更がなければもう少し長い間変更がなかったかもしれません。実際には、それ以前にも細かな変化はありましたが、初めての大きな変化があったのはこのタイミングになるでしょう。
1974年の秋に登場した930型は、それまでにない幅広のホイール/タイヤと広いトレッドにあわせて前後のフェンダーが更に張り出し、力強いイメージで注目を集めました。実は、その930型よりも少し早く73年末に登場したカレラRS3.0が既に同じくらい張り出したフェンダーを持っていました。しかし、ホモロゲーション取得目的で106台しか生産されておらず、しかもその殆どがレース専用車とされていたので、さほど注目されることがありませんでした。その他には、RS2.7のダックテールから発展したRS3.0のトレー型リヤスポイラーも採用されました。

新型バンパーを取り付ければそれだけ重量が増えてしまいます。ポルシェでは、その重量の増加を少しでも抑えるために、2個のバッテリーを一つにまとめ、シートの骨組みに樹脂を使用してシート全体の重量を減らし、リアのインナー・トレーリングアームの材質を鉄からアルミに換え、燃料タンクを樹脂化するなど様々な工夫を凝らしました。その工夫のかいもあり新バンパーを取り付けた分の重量増加については±0kgとすることが出来ました(ただし、他の部分での重量増加があるために車体そのものの重量は増えています)。

いかにポルシェが軽量化に熱心に取り組んでも1970年代後半になると911の重量の増大化を抑えることが難しくなってしまします。
重量の増加につながる要因は色々とありますが、エンジンのパワーアップも要因の一つです。頑丈なトランスミッションや強化したサスペンション、大きなホイールとタイヤ、大型で重たいブレーキなどが重量を増やしていきます。
確かにエンジンのパワーアップに関する内容は重量の増加につながっていますが、実は最も重要の増加につながっている要因は他にあります。それは、法規への対応とユーザーの要求に応じた快適装備の充実です。
衝突や騒音に対する対策やエミッションの規制強化などについては、対応しない訳にはいきませんしユーザーの要求も無視することができません。しかし、この快適装備が際限なく増えていく事が当時のポルシェをたいへん困らせていました。パワーウィンドー、オートマチックヒーター、パワードアロック、電動シート、スピーオーディオシステム等が普及し更には、パワーステアリング、両席エアバッグ、ハイテク盗難防止装置などが加わりました。当時のエアコンは、それだけでも20kgは超えていましたし、サンルーフという大物もありました。
現在では当たり前にの装備ですが当時としは、重量対策の面では悩みの種だったでしょう。
実際に1967年の911Sでは、フルタンクで1100kgだった重量が964型では1350kg〜1450kg、993型では1370kgと重量が増えていきました。

911の重量が増えていったのは、隠しようのない事実ではあります。しかし、装備が増えて行けば重量も増えていくのは当たり前です。そこでポルシェは他社とは比べ物にならないほど徹底した重量増加対策を行い、軽量化出来る部分については徹底的に軽量化を行いました。他社の同クラスの車と比べて重量は遥かに軽くなり、同じ重さの車と比べてもコストパフォーマンスや性能の面で大きく優位にたちました。
これこそが「最小の居住空間の周りに最大の性能を発揮する軽量でコンパクトな車にする」というコンセプトを見事に実践している証ではないでしょうか。

更新日: 2016年8月3日 投稿者: UNTAMED スタッフ

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