カレラというモデル

55年に登場した356A/1500GSカレラ、この車こそポルシェ初のカレラの名前を冠にしたです。その後歴代の356でカレラがリリースされるようになり、その後歴代の356でカレラがリリースされていきました。そして現在に至るまでにも様々なカレラが登場しています。一方、ポルシェにはターボを搭載したモデルも登場しています。ロードカーで初めてターボが搭載されたモデルは75年の930ターボの名前でリリースされたモデルです。ポルシェターボといえばポルシェのトップに君臨するモデルで憧れの対象でもありました。いつしかNAエンジンの象徴となっていた「カレラ」とステイタスシンボルである「ターボ」この二つは交わることなくそれぞれの歴史を歩んできました。
しかし、そんなカレラにターボが搭載される事になり、一時期話題となりました。

ダウンサイジングの始まり

エンジンの排気量拡大と多気筒数は比例していて、排気量が増えれば気筒数も増えていきます。そして気筒数が増えればエンジンそのもの大きさも大きくなります。エンジンの出力や特性は、エンジンの排気量に大きく影響を受けています。
そんなエンジンも戦後の自動車の普及につれて車体のコンパクト化が進むとともに、エンジンのコンパクト化も求められる課題となっていきました。しかし、ラグジュアリー性を売りにするような高級車や高い動力性能が求められるスポーツカーでは変わらずに大排気量、多気筒エンジンを搭載していました。そのような時代の流れの中で誕生したのがターボでした。4気筒や6気筒のエンジンでも巨大エンジンに近いパワーを得るために使用され注目を浴びていました。
ポルシェにとってもライバルが巨大エンジンで運動性能を高めていく中で、水平対向6気筒エンジンというポリシーを守りつつライバルに劣らないパフォーマンスを引き出すためにターボを搭載したモデルを誕生させることになりました。
1980年代になるとターボは主にパワーを得るための手段として大衆車のレベルにまで普及していくことになりましたが90年代に入ると地球温暖化の表面化や世界的な景気停滞も重なってパワー指向のエンジンテクノロジーは停滞していきます。
その頃CO2削減と動力性能の両立を狙ったディーゼルエンジンは普及とともに開発も進んでいきますが、ディーゼルエンジンの開発で培った高効率技術をガソリンエンジンに活用できないかという模索が始まっていきました。それがダウンサイジング・テクノロジーの出発点で、それを初めて具体的な形で市販車に搭載したのがゴルフ5のTSIでした。

現在流行のダウンサイジングとは、エンジンの排気量を小さくし低公害と低燃費を実現するために行われます。そして小さくした排気量を小さくする代わりにターボ加給を行うことで環境性能と運動性能を両立させている訳です。
その流れはポルシェにも他のメーカーと同じようにやってきます。現在はエンジンの排気量を小さくしてターボ過給するダウンサイジングターボが大流行しています。ポルシェも991後期型でその大きな流れに乗って行く事になります。
ポルシェは、ダウンサイジングではなくライトサイジングを呼んでいて、このライトはLight(軽い)ではなくRight(正しい)という意味で適切な排気量にしてターボ搭載したとしていますが、排気量を下げてターボ過給しているという点ではダウンサイジングターボと同様です。

ただ、ポルシェファンにとっては、ライトサイジングということよりも「カレラにターボがついた」という事の方が重要になると思います。

カレラというモデル

長年NAモデルとして印象つけられていた「カレラ」という名前ですが、その名前の意味をご存知の方も多いと思います。「カレラ」とは「レース」を意味するスペイン語になります。
54年にポルシェはアメリカ大陸横断道路のメキシコ部分完成を祝した公道レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」に550スパイダーで参戦し、そのレースでクラス優勝、その優勝を記念してGTカテゴリーのレーシングモデルとスポーツモデルに「カレラ」の名前が付けられるようになりました。55年の356A/1500GSカレラで初めてカレラの名前が付けられ、その後は歴代の356でカレラがリリースされていきます。
911でカレラの名前が付けられたのは73年の911カレラRSから始まり、RSをベースに開発された911カレラRSR2.8、930時代には74年911カレラRS3.0や911カレラRSR3.0が登場します。いずれもヨーロッパGT選手権のホモロゲーション取得用モデルだったりFIA・GTカテゴリー用ホモロゲーション取得用として開発されたものでした。
77年以降は、カレラの登場はありませんでしたが84年に930カレラ3.2としてカレラが復活します。カレラの名前が復活したのは過去のカレラに勝る911が誕生したから、つまり市販911史上で最も速い911が誕生したためです。「ポルシェが、なまじの車にカレラを名乗らせるはずがない」という言葉に現れているように「カレラ」という名前は特別なものという事になります。

2015年まで911にも当然ターボ車は登場しています、ポルシェターボとポルシェカレラは911を代表するモデルとして活躍してきました。そして、この関係性が長く続いた為にカレラはNAエンジンの象徴としてファンの間に印象つけられていたのかもしれません。
しかし、実は過去に2回だけ「カレラでありターボ」という911が誕生したことがあります。それが74年の「911カレラRSRターボ」と75年の930ターボの米国仕様「930ターボ・カレラ」になります。
この930ターボ・カレラは、米国仕様のみがこの名前で販売されましたがその理由は、世界的には「930ターボ」で浸透していたにもかかわらず、当時ポルシェの最大販売国アメリカでは「スペシャルな車にはカレラがつくのが当たり前」という考えが浸透していた為に、米国仕様の930ターボだけはリアフードに「turbo」と「Carrera」のバッジを並べて貼り付けて「930ターボ・カレラ」として販売したからです。
このエピソードだけでも「カレラ」という名前がいかに特別なものなのかが感じられます。

2016年、ついにカレラにターボが搭載されました。今後は全てのカレラにターボが搭載されることになるかもしれません。ターボとNAエンジンの住み分けとして「ターボ」と「カレラ」の名前があったように感じられていたファンからすると「カレラの名前がつく基準は一体何なのか?」と疑問に感じてしまうかもしれません。
しかし、実は「カレラ」という名前にはNAエンジンもターボも関係がないという事なのかもしれません。最も重要な事は「その車がカレラの名前に恥じない高性能車」であるか、ないかという事になるのではないでしょうか。
そのように考えると今回の991カレラ後期型は、カレラと名乗るだけの高性能車としてリリースするポルシェの自信作になっているのではないでしょうか。10年後20年後、更にその先の未来では、今回のカレラが伝説のカレラとして語り継がれているかもしれません。

更新日: 2016年7月25日 投稿者: スタッフ

    空冷ポルシェ関連
    空冷ポルシェ
    Contact us
    お電話でのお問合せ
    Contact us
    お電話でのお問合せ