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何故か温かい空冷ポルシェ

ポルシェ356の後継車種として1964年から製造・販売されているポルシェ911は世界での人気の高いスポーツカーです。
ポルシェ911シリーズは最新車種も人気ですが、旧式の車種も最新車種にも負けないほどの人気があります。特に1964年から1997年の間に製造・販売されていた空冷式エンジンを搭載した”空冷ポルシェ”は根強い人気があり世界中で愛され続けている車です。
最も古い物だと50年以上も前に販売された車種が未だに高い人気を持っている秘密は、やはりもう生産されないであろう空冷式エンジンを搭載しているという点が大きいと思います。
世界中でファンの心を掴んで離さない空冷ポルシェの魅力とは一体どういう所なのか、私なりにまとめてみたいと思います。

車のエンジンは、その内部にあるシリンダーの中で燃料を燃焼させて発生する熱エネルギーを機械エネルギーに変換する装置です。簡単に言うとエンジンの中でガソリンを燃やして動力となるパワーを得る機械ということですね。エンジン内では、何度もこの燃焼が行われていいるので当然エンジンは熱を持つことになります。エンジンの開発は、いかに効率よく燃料を消費し、より大きなパワーを生み出すかという点と、燃料を消費した際に生じるこの熱をどのように制御するかという点も大きな課題になると思います。ある程度の熱はエンジンにとっても必要になりますが、エンジン自体の温度が高くなりすぎてしまうとオーバーヒートを起こしてしまい、最悪の場合にはエンジンが壊れてしまう事にもなります。
エンジンの性能を最大限に発揮させるには、エンジンを適切な温度に保ち続けるようにエンジンを冷却しなくてはなりません。

この車のエンジンが発した熱を排熱する為の方法として現在主流となっているのは水冷式と言われるエンジンの冷却方法です。
水冷式エンジンは、「水」という文字が使われているように水を使ってエンジンの熱を冷却します。エンジン内部に水を循環させてエンジンの熱を吸収し、熱を吸収した水はラジエーターへ送られラジエーターで空気冷却されます。ラジエーターで冷却された水は再びエンジン内部を巡り、エンジンで発生した熱を吸収してラジエーターに戻ってくるという循環を行いエンジンの熱を効率的に冷却しています。
水冷式エンジンのメリットとしては、エンジン内を全体的に水が循環しているため均等に冷却能力が高くなる点や巡回している水にも遮音効果があるためにエンジンのメカノイズを抑えることが出来る点などがあげられると思います。その他にも温度のコントロールがしやすくなる、エンジン自体の設計をコンパクトに出来る等メリットが多々ある為に現在の冷却装置の主流となっている理由だと思います。

ただし、水冷式エンジンにもデメリットがない訳ではありません。構造が複雑になり、それに伴い部品の点数が増えコストが上がる。ラジエーターなどのエンジン以外のパーツも増えるので全体的な重量が増えることになります。パーツが増えるという事はその分、壊れる可能性がある箇所も増えるということになり、故障が発生した場合は構造が複雑になっているため修理にも手間がかかってしまう事もあります。

一方、エンジンからの熱を空気を利用して排熱する方法をとっているのが空冷エンジンと呼ばれます。冷却方法としては、最もシンプルな方法と言えると思います。
ポルシェでは、911シリーズの前身と言われるポルシェ356からポルシェ911シリーズの901から993までこの空冷エンジンを搭載していて、これらのモデルが所謂「空冷ポルシェ」と呼ばれるモデルになります。

この空冷エンジンは大まかに分けると「自然空冷式」と「強制空冷式」の二通りに分けることが出来ます。自然空冷式は、エンジンのシリンダー外部に冷却フィンを取り付け、その冷却フィンに走行風などの外気を当てることでエンジンの熱を冷却する方式になります。エンジンの重量を軽量化し構造を簡易化することができるので主に二輪車に採用される冷却方式になります。
しかし、空冷ポルシェの様にリアにエンジンを搭載してあるレイアウトでは直接空気を当ててエンジンを冷却することが出来ません。空冷ポルシェに限らずレイアウトなどの都合で直接外気を当てることが出来ないエンジンについては、冷却用ファンなどを使い空気を当てたりもしくは、エンジンルームに空気を流しこむことでエンジンの熱を強制的に排熱します。この方式が「強制空冷式」と呼ばれる冷却方式になります。

この空冷式エンジンのメリットには、構造がシンプルなため製造コストを抑えることができ尚且つ頑丈なエンジンになります。そしてシンプルな構造になっているためメンテナンスも行いやすいという点があります。また、エンジンの部品やラジエーターなどの冷却用のパーツが少なくなるため車体の軽量化を計ることが可能となります。

対して空冷エンジンのデメリットは、水冷式に比べて冷却性能が劣りエンジン温度のコントロールが困難なため排ガス規制への対応が難しい、強制空冷式の場合は冷却用ファンのスペースが必要になる、騒音に関しても水冷式に比べると大きくなってしまう、そしてエンジンの状態を維持する為にまめなメンテナンスが必要になる等が挙げられるかと思います。
空冷ポルシェは、ドライサンプによる大量のエンジンオイルをしてエンジンの冷却を行う油冷式という冷却方式も併せて採用していて、エンジンオイルの温度も水冷式に比べて上がりやすいのでオイル交換の頻度が多くなりメンテナンス面のコストがかかります。

水冷式、空冷式の双方に様々なメリットやデメリットがありながらも現在では空冷式よりも水冷式の方が優位なのは、実際に採用されているシェアを考えればすぐにわかると思います。現代の自動車にはやはりエンジンの安定した性能を保つことが出来る水冷式のエンジンの方が時代に合っているのでしょう。
しかし、それでもポルシェ911の901から993までの空冷ポルシェの人気が衰えないのは何故でしょうか。それは、メリットやデメリットを抜きにしても空冷ポルシェには、空冷ポルシェにしかない魅力があるからでしょう。

空冷ポルシェがファンの心を掴んで離さない魅力は何か?その魅力については、それぞれの感じ方があるのでこれが正解ですとは言いがたいですが、空冷ポルシェの魅力といえばエンジンの音がその一つに挙げれられると思います。先ほどは、デメリットとして騒音を挙げましたが、それは空冷ポルシェのファンから見れば「この音だから良い」という魅力になります。水冷式では絶対に聞くことの出来ない空冷ポルシェのエンジン音、澄んだ金属音と乾いたマフラーの合わさった空冷ポルシェ独特のエンジン音が空冷ポルシェファンの心を震わせてくれます。
先ほどデメリットとして、まめなメンテナンスが必要と書きましたがこれも空冷ポルシェファンからすれば好きな車を大切にメンテナンスする事がデメリットには全くなりません。むしろメンテナンスにかけた時間やお金は全て空冷ポルシェへの愛情となり、空冷ポルシェは受けたその愛情を必ずパフォーマンスという形で返してくれます。古くは50年以上も前に生産された車でも安心して愛情を注ぐことができて、尚且つその愛情に素直に応えてくれる車は空冷ポルシェ以外にはそうそう見つからないと思います。
ポルシェには、新しい車種だけではなく全てのポルシェをより長く乗り続けてもらえるようにポルシェクラシックパートナーが設立されています。ポルシェクラシックは10年以上前に生産が終了した全ての車のケアを行っていて空冷ポルシェ用の新しいエンジンオイルを開発したり、オイルフィルターを復活させるなどしています。このポルシェクラシックが存在することで生産された全てのポルシェの70%以上が未だに現役として活躍していると言われています。空冷ポルシェの魅力というよりはポルシェの魅力と言えますが、このポルシェの精神があるからこそ空冷ポルシェのファンが減らない理由の一つになっていると思います。

その他にも、純粋にこの年代のデザインが好きだったり、空冷ポルシェでしか味わうことが出来ない乗り心地だったり、空冷ポルシェを乗りこなす気持ち良さ等、空冷ポルシェファンの数だけ魅力が挙げられると思います。そして、空冷ポルシェに乗ってしまうとその魅力に取りつかれ忘れることが出来なくなってしまう人が数多くいます。そしてそれは、空冷ポルシェファンが世界中に存在している事で証明されていると思います。

ポルシェ911は世界のスポーツカーの中でも数少ないRRの駆動方式を採用している車で、常に進化をしていて最新のポルシェは、本当に素晴らしい高性能なスポーツカーです。それは、空冷ポルシェから水冷ポルシェに移行してからも続いていて常に最高のポルシェが開発されています。
最新技術を駆使し最高のポルシェを追求し続ける姿勢は、とてもストイックで素晴らしい事です。しかし、だからといって過去の歴史を蔑ろにするにすることなくクラシックポルシェのケアを怠らない考え方が数多くのポルシェファンを惹きつけ、そのポルシェファンの中に空冷ポルシェの魅力に魅入られた空冷ポルシェファンが存在しているのだと思います。

もしも、貴方が空冷ポルシェに興味があるものの、まだ空冷ポルシェに乗ったことがない方でしたら是非一度、空冷ポルシェに乗っていただき貴方なりに空冷ポルシェの魅力を感じてください。
空冷ポルシェは、貴方の注いだ愛情を決して裏切ることなく貴方を魅了し続ける素晴らしい車です。

空冷ポルシェには、他の車ではなかなか味わうことのない温もりを感じています。
デザインや様々な技術の積み重ね、開発に携わった人々の思い、そしてその思いを引き継いだオーナーが注いだ愛情など一言では言い表せない歴史が空冷ポルシェ一台一台にあり、その歴史が空冷ポルシェに温もりを与えているのではないかと感じています。

もちろん走行性能やデザインなど様々な面で空冷ポルシェのそれを上回る車は、たくさんあります。そして世界中に存在する車の全てに様々な歴史があります。そんな中でも何故か気になってしまう。
空冷ポルシェとは、そんな魅力を持った車だと私は感じています。

更新日: 2016年7月12日 投稿者: UNTAMED スタッフ

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